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藝大声楽科を受けたい人必見!受験対策やることは?

ここでは、日本最高峰であり、唯一の国立芸術大学である東京藝術大学音楽学部声楽科の受験について、何が必要なのか、準備することや、注意事項など含めて説明しています。
※美術学部のことは書いてありません。

藝大音楽学部の入試に興味のある方、藝大の声楽科の受験を考えている方、どの学科の受験をしようか迷っている方、声楽科の受験でなくとも3次試験は共通事項が多いので、参考にしていってくださいね(^▽^)/

20歳を超えての藝大受験で、幼少期からの音楽の専門教育を受けてこなかった筆者による記事のため、コスパ重視・最短最速でやらなければいけない受験対策をまとめています。
特に、ここでは受験の時系列に沿って、何が必要なのかを解説しています。

実際の試験当日の詳細な情況、内容についてはこちらをご覧ください。

一次試験【課題曲(日本歌曲4曲+外国語歌曲4曲)】

一次試験 (課題曲審査)

受験科目: 日本歌曲1曲 + 外国語歌曲1曲(当日に歌う曲は決定する)
ピアノ伴奏: 大学に所属するピアノ伴奏員による(打ち合わせや、練習の時間はなし)
演奏時間: 2曲合わせて4分以内
最終合否判定の配点: 50点/170点

詳しくはこちら:一次試験のながれと注意点

一次試験は、もちろん歌曲審査!!

藝大は国立の藝術大学ですが、お勉強より実技の配点が大きいです。

とにもかくにも、最初の実技試験を突破しなければいけません!

入試の課題曲については、毎年9月の初めくらいに発表されます。
2023年度 東京藝術大学音楽学部(声楽科)入学者選抜試験課題曲

…ですが、毎年ほとんど変わりません。

9月に課題曲が発表されるからといって、それから曲を選んで練習していたのでは間に合いません。

自分の受験する回の課題曲が発表されるまでは歴代の入試曲の中から、数曲選び練習しておきましょう。

まずは、日本歌曲を4曲選びます。

日本歌曲の課題曲は15曲の中から選べますが、この楽譜から出題されているのでは?と思うほど、毎年の課題曲が網羅されている楽譜がります。

音楽之友社『最新・日本歌曲選集 日本歌曲名歌集(原調版)』

こちらを一冊持っておけば藝大の日本歌曲をコスパ良く、選択する助けになります。

また、収録曲が68曲と多く、声楽を勉強する際に、一冊は持っておきたい楽譜です!

さて、お次は外国語歌曲!

イタリア、ドイツ、フランスから、4曲選びます。
それぞれの言語のグループに関係なく自由に4曲選択できます。

ですが、ほとんどの人がイタリア語の古典歌曲を選びます。

その理由はいたってシンプル。消去法です。

ドイツ語は子音の扱いが難しく、その発語というものはかなり長い時間をかけて習得するものであり、初心者には難しい。

そして、フランス語については母音が多く(17種類もの母音があります!)初心者には歌い分けることが困難だからです。

消去法によって、イタリア語を選ぶ方が多いということです。

ドイツ歌曲やフランス歌曲が好きで歌いたいと思っている方は、大学に入ってから専門的に、授業やレッスンで学ぶことが多いです。

イタリア語の歌曲については、15曲課題曲がありますが、そのうちのだいたい10曲は、全音音楽出版から出ている、全音楽譜出版『イタリア歌曲集1』に載っています。藝大声楽科を受験する人は、例外なく持っている楽譜です。

こちらは中声用で、だいたいの方はこの中声用の調性(キーの高さ)で大体大丈夫ですが、極端に中音域が出ないハイソプラノの方や、上が出ない低音域の声をお持ちの方は高声用や低声用などもあります。

しかし、最初はどんな声をお持ちの方も、こちらの中声用の楽譜から始めるのが一般的です。

また、4曲ずつと言いましたが、実際は3曲ずつ用意している人が多いです。いわゆる捨て曲を設定するのも戦略かもしれません。
捨て曲についてはこちら

また、この一次試験で、声楽科志願者の人数がだいたい半分に絞られます。

歌う時間は二曲でたったの4分間しかありません!

時間になったらどんなにうまくても、ベルを鳴らされ、退場させられます

また、もっと詳しい試験当日のながれはこちら

二次試験【自由曲】

二次試験(自由曲審査)

受験科目: 自由曲(あらかじめ決めて提出した1曲を演奏)
ピアノ伴奏: 大学に所属するピアノ伴奏員による(打ち合わせや、練習の時間はなし)
演奏時間: 4分以内
最終合否判定の配点: 100点/170点

詳しくはこちら:二次試験のながれと注意点

二次試験は自由曲です。課題曲のような制約はなく、何でも歌っていいです。

4分間は、自分だけの時間です。

逆に言うと、4分間で決まってしまう試験です。

与えられた4分間で、すべてを出し切らなきゃいけません。

緊張して声が出なかった…なんて、言い訳しないでいいように、

入試前には、人前で歌う機会を何度も作っておきましょう。

緊張しても歌える訓練が必要です!

どんな状況でも、しっかり歌える!大丈夫!!

こういった自信が持てたら、大丈夫です。

これが大切なんです。

また、しっかり歌える実力はもちろん必要ですが、選曲で8割方決まると言っても過言ではありません。

自分の良さが出る曲、自分の粗が見えない曲を選ぶことです。
2023年度 東京藝術大学音楽学部(声楽科)入学者選抜試験課題曲
(二次試験の自由曲については、3ページ目を参照してください。)

いろんな曲を歌ってみて、自分の歌の先生と相談して決めましょう。

たくさんの曲に当たってみなければ、どれが好きか、どれが歌いやすいのか、案外これが得意なんだな!とか、分かりません。

歌の先生が薦めてくださる曲は、歌ってみましょう。

自分のついている先生を信頼して、頑張ってください!

ただ、どうしても歌いたい曲がある場合は、先生に相談してみてチャレンジすることもいいと思います。

そして、二次試験は何でもうたっていいですが、注意点があります。

オペラのアリアを歌う場合、移調が基本的に認められないということです(キーを変えてはいけない)。原調か、もしくは慣習的に認められている調でなければいけません。

一次試験の歌曲の場合、移調(キーを変えて歌うことを)しても構いませんが、オペラだけは、それが認められていません。

理由は、オペラというものは、声とキャラクターが一致しています。演劇のように自分の解釈で、思った声の高さをじぶんで選び、その役を演じるということが出来ないからです。

なぜか?

オペラは、セリフもすべて楽譜に書かれているからです。

男性の低い声の音域で書かれた曲を女性が歌うことは物理的にできません。

その人が持っている声で役柄が決まっているため、その役に与えられた歌のパートが歌えないことには、その役はできないのです。詳しくはこちら

また、二次試験では一次試験に残った人数の半分が脱落します。一次試験と二次試験で、最初の人数から比べると、だいたい1/4になります!

二次試験の詳細な当日のながれはこちら

三次試験(概要)

三次試験は、音楽の読み書き、インプット・アウトプットがきちんとできるかどうかを見られます。

音楽に関する基礎能力検査です。

一次と二次に比べると、落ちる人数がぐっと減り、各声部で数人と言ったところです。
藝大学部の声楽科全体の定員人数はひと学年54人。

その人数に整えるために、音楽の基礎的な読み書きができるかを見て、最後のふるいに掛けられます。

ここで重要なことは、大きなへまをしないことが大切です。

すごーくうまくなくてもいいけれど、平均的に何となく何でもできるということが求められます。

ここまで残ったら、実技の歌では合格点をもらえたということになります。

ですが、三次試験で合格しないと晴れて藝大に通うことはできません。

だからこそ!大きなへまをしないことが重要です。

三次試験は大まかに8つの試験があります。

  1. コールユーブンゲン
  2. 新曲視唱(伴奏なし・伴奏あり)
  3. リズム課題
  4. 聴音書き取り(単旋律・二声・四声)
  5. 楽典
  6. 副科ピアノ(ハノン・課題曲)
  7. 大学入学共通テスト(国語・外国語)

    詳しくはこちら
    東京藝術大学入試情報(公式ホームページ)
    2023年度 東京藝術大学音楽学部(声楽科)入学者選抜試験課題曲
    2023年度 東京藝術大学 入学者選抜要項

…多いですね(^▽^;)

2~4をまとめて「ソルフェージュ」と言ったりします。

ソルフェージュに関しては、専門に教えてくださる先生の所へ行ってレッスンをしてもらい、対策をするのがいいでしょう。

というのも、ソルフェージュは自分ひとりの力ではどうにもカバーできない部分があります。例えば、伴奏つき新曲視唱などは、伴奏して下さる人がいてはじめて練習できることです。

また、ピアノも自己流ではなく、専門のピアノの先生にレッスンしてもらうことをお勧めします。

ピアノもソルフェージュも、一緒にレッスンしてくださる先生は多いので、何か所も通わずに、まとめてみてもらうのもいいかもしれません。

全く何もやったことがなくても、コツをつかむことと慣れで、ある程度(声楽家合格ライン)はできるようになります。

ここから、三次試験の詳しい内容を説明します!

三次試験【1.コールユーブンゲン】

三次試験(前半①コールユーブンゲン)

受験科目: コールユーブンゲン
ピアノ伴奏: なし
予見時間: なし
最終合否判定の配点: 20点/170点

詳しくはこちら:【コールユーブンゲン】試験のながれと注意点

F. Wullner : Chorubungen Ⅰ(全訳)(抜粋及び省略本は不可)の中から,試験の際に指定される曲を演奏する。

2022年度 東京藝術大学音楽学部・別科入学者選抜試験 試験内容及び課題曲(2021年10月1日掲載)4頁。

コールユーブンゲンとは?

ドイツ人が書いた、合唱練習曲のことです。

伴奏なしで、正しい音程・リズムで歌えるかを見られます。

調号なし(C-dur・a-moll)の曲が前半にあり、まずは音程がきれいに取れるかというところから始まります。調号ありの曲が後半にあります。

90曲近い曲の中から出題されます。

コールユーブンゲンは、曲ごとに何を習得しなければいけないのかという課題が、楽譜を見れば明確に分かります。

課題を明確に理解したうえで、練習することが上達の近道です。

この、コールユーブンゲンをしっかり勉強した人は、確実に歌う力・歌う基礎が身につきます。

入試で必須だからというモチベーションではなく、歌い手になるためしっかり基礎を身につけるという気持ちで取り組むといいでしょう。

しっかり取り組むことで、音楽的な能力が非常にアップします。

また、一次二次の実技試験に次いで、最終合否判定の配点があるのは、三次試験でコールユーブンゲンのみです。詳しくはこちら

三次試験【2.新曲視唱】

三次試験(前半②新曲視唱、リズム課題)

受験科目: 新曲視唱、リズム課題
ピアノ伴奏: なし
予見時間: 2分間(新曲視唱伴奏なし、リズム課題すべて合わせて2分間)
最終合否判定の配点: 特に記載はなし

詳しくはこちら:藝大三次【新曲視唱】【リズム課題】試験のながれと注意点

新曲視唱とは?

初めて渡された楽譜に書いてある曲を歌います。

予見といって、歌う前に一曲につき30秒~1分ほど、あらかじめ楽譜を見る時間が設けられています。

伴奏なしの曲が出題されます。

やったことがない方は、「え~!無理」と思うかもしれませんが、声楽科の試験では、そんなに難しい曲は出されませんので、ご安心を!

コツをつかんで慣れさえすれば、短期間でも声楽科の試験レベルならクリアできます!

三次試験【3.リズム課題】

リズム課題は、文字通りリズムが読めるか、読んだリズムを正確に再現できるかを見られます。

でも、そんなに難しくはありません。

ここで注意したいのは、しっかり手で拍子をとり、一定のテンポを崩さずに口でリズムを言います。

だいたい、隣り合った二つの音で、音程は付けずに音名(ファ、ソなど)でリズムを言います。

新曲視唱より、基礎的なことですから、楽譜を読むのが苦手な方は、ソルフェージュの中でもこちらから取り組むのもいいかもしれません。

三次試験【4.楽典】

三次試験(後半①楽典)

受験科目: 楽典(音楽理論)
実施内容: 音楽用語の意味、楽譜の移調など、音楽の読み書きができるかどうかの試験。
最終合否判定の配点: 特に記載はなし

詳しくはこちら:三次試験【楽典】【聴音】【副科ピアノ】のながれと注意点

楽典とは、音楽の基礎知識です。

藝大や音大に入学するなら、最低限これくらいは知っておいてね!というもの。

まず、例外なく、みんな通る本があります。

音楽之友社『新装版 楽典 理論と実習』

まずこの内容がしっかり分かっていれば、藝大入試では合格点が取れます。

この本の内容を理解して、ばっちり解けるようになったら、過去問や他の問題集をやりましょう。

三次試験【5.聴音書き取り】

三次試験(後半②聴音)

受験科目: 聴音(単旋律、二声、四声)
音源の種類: 一斉録音放送
演奏回数: 通奏1回、前半2~3回、通奏1回、後半3~4回、通奏1回
最終合否判定の配点: 特に記載はなし

詳しくはこちら:三次試験【楽典】【聴音】【副科ピアノ】のながれと注意点

聴音とは、耳で音を聴いて、聞き取った音を楽譜に書くことを言います。

まず、何もやったことのない人はこちらをご覧ください。

今は、聴音に関して音源付きでたくさんの本が出ています。

ソルフェージュのレッスンに通いながら、日々忙しいかもしれませんがこういった教材を使って毎日一曲分でもいいので聴音の特訓をして、慣れることが大切です。

「でも、本物のピアノの音じゃないと…」と思っている方!

聴音試験の本番は、藝大ではスピーカーから流れてくる放送の音源が聴きとらなければいけません。

だから、ソルフェージュレッスンで生のピアノの音を聴いて、音をとることも大切ですが、録音された音でも慣れておいた方がいいでしょう。

わたしはCD-ROM付きの問題集にとても助けられました!

収録曲数、内容、共に非常に充実していて、お勧めです!

三次試験【6.副科ピアノ】

三次試験(後半③副科ピアノ)

受験科目: ピアノ実技演奏
試験内容: Hanon No.39のどれか一つの長調とその平行調、自身で選んだピアノ課題曲1曲
練習時間: なし(試験本番以前にピアノに触れる時間はなし)
最終合否判定の配点: 特に記載はなし

詳しくはこちら:三次試験【楽典】【聴音】【副科ピアノ】のながれと注意点

副科ピアノでは、ピアノ科を受験する人のような上手さは求められていません。

そりゃ、上手く弾けたらそれに越したことはありませんが、確実に弾ければ十分でしょう。

ピアノを全くやってこなかった…という人は、一番大変なのがピアノの試験課題になるかもしれません。

実際に、私がそうでした(^▽^;)

まず、ハノンという教則本のNo.39の同一調号の長調・短調の音階を弾けるようにならないといけません。

長短調、全部で24種類の音階があり、その中でも短調は、和声的短音階と旋律的短音階の2種類を弾かなければいけません。

当日に、どの調を弾くか指定されます。

そして、課題曲はソナタかソナチネを弾きます。

難しい選曲はせずに、自分の力量でもしっかり弾ききれる曲を選びましょう。

この課題曲も、毎年ほとんど変わりません。

全音出版の「ソナチネアルバム1」にある曲ばかりです。

実際の楽譜を見て、選ぶ前に、試しに弾いてみるのも大切です。

三次試験【7.大学入学共通テスト】

これについては、必要な科目を受けていれば問題ないと思っていただいて大丈夫です。

というのも、大学入学共通テストの欄に小さくこのように書いてあります。

大学入学共通テストの成績は、最終判定に用いる。個別学力検査等の成績を重視する。

2023年度 入学者選抜要項(2021年7月26日掲載)11頁。

最後の最後、同じような成績だった人がいて、どちらかを落とさなければならない時に使われると、まことしやかに藝大内部では伝わっています。

センター試験の時代ですが、センター試験半分も取れなかった人も合格しているということをよく聞きます。

まことしやかに語られ続けていた合格ラインは「半分の点数が取れればいい」でした。

半分取れたら合格点と思っていいでしょう。

センター試験の得点を上げることを考えるよりも、一次試験と二次試験の実技、歌にウエイトを置いて練習した方がコスパはいいでしょう。

なんせ、一次試験と二次試験をパスしないことには、三次試験まで進めませんから!

まとめ

まずは、一次と二次の実技試験でしっかり点数を取っておくことが大切です。

正直、三次試験は一次試験と二次試験で、点数が下にいる人の席の取り合いと思っていれば大丈夫です。

しかし、全く基礎的なことが出来ていない、ピアノが弾けない、新曲視唱が歌えないでは、歌の点数が良くても、藝大で勉強するには難しいと判断されてしまうこともあるでしょう。

「藝大合格のため」ではなく、音楽家として生きていきたいと思っているのなら、しっかり勉強して、基礎体力をつけておくことが大切です。

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