藝大の声楽科の三次試験で出題される『コールユーブンゲン』についての記事です。
「コールユーブンゲン」とは、ドイツ人フランツ・ヴェルナーさんがミュンヘン音楽学校の合唱指導を任された際に、練習書として書いた本です。
東京藝大の受験だけでなく、日本のほとんどすべての音楽大学や教育学部でも、必ずと言っていいほど受験の必須科目として出題されていますね。
そんなコールユーブンゲンについての解説です!
ここでは具体的な対策についてではなく、コールユーブンゲンの基本情報や、試験での存在位置、受験生がどのようなスタンスでコールユーブンゲンを仕上げて試験で歌うべきか、などを丁寧に書いています。
コールユーブンゲンって何曲あるの?
コールユーブンゲンは、全部で87番まである。
87番まであるとは言っても、歌わずに音名読みだけする部分や、同じ曲の中でa)、b)、c)…と分かれているものまであります。
数えてみたところ、受験で出題されるであろう歌う曲は、前半の調号が出ないNo.46までのCdurの部分だけで169曲、そして、後半No.48からの調号付き部分は60曲、全体で約230曲の中から、当日指定され歌わなければならない。
230曲?!多いよ~!!
どこから出るか分からないから、全部完璧に歌えるようにしなきゃいけないよね?どれだけの時間がかかるんだろう??
…なんて思われるかもしれませんが、全ての藝大の受験科目の中で、コールユーブンゲンはかなり得点を取りやすく、完璧に歌えるためにコストをかけるだけの価値があると、わたし、すずめは分析しております。
ぱっと見では、すごく大変そうだけど…どうしてそれだけの価値があると言えるの?
コールユーブンゲンを完璧にすることで、得られる事
確かに、歌えるようになるには時間がかかりますが、完璧に歌えるようになることで、それ以上に素晴らしい特典が付いてきます!
まず、歌えるだけでひとつの科目で満点が取れます。
これはかなり大きいです。
なぜか?
では、よく考えてみてください。
藝大三次試験では、コールユーブンゲン以外に6つもの科目があります。
努力でカバーできるものもありますが、どうしようもない科目もありますし、実技試験では何があるか分かりません。
ピアノはミスタッチをする可能性がありますし、新曲視唱やリズム課題、聴音は当日どんな課題が出るか分かりません。楽典は、8~9割方とることは可能ですが、知らない問題やマニアックな単語が出てくる可能性もあるので、本当の満点というのは難しいです。もちろん大学入学共通試験で満点は難しいのは皆さんお分かりだと思います。
では、コールユーブンゲンはどうでしょう?
最初から何が出るのか、どこから出るのかしっかり範囲が決まっており、正しく歌えるように練習していさえすれば必ず満点が取れます。
私が考えるに、満点を取りうる三次試験の科目はコールユーブンゲンしかありません。
ここで満点が取れないようでは、歌い手にはなれないと思ってもいいくらいです。
それくらい歌の基礎中の基礎であり、誰でもやればできるのです。
藝大を受験する人たちは、ここで絶対に点数を落としません。
コールユーブンゲンだけは努力で100点満点が取れるからです。できて当然というスタンスでやってきます。
正しい音程、正しいリズムで歌う。
例えるなら、薄く書かれたお手本のひらがなをきれいになぞって、そして、お手本がなくても自分できれいなひらがなが書けるようになる。
そんなところでしょうか。
基礎の基礎ということです。
クラシック音楽ではここがクリアできて、初めて次の段階に進むことが出来ます。
しっかりやればやるだけ、基礎が確かなものになります。
コールユーブンゲンで注意してほしいこと【音程】
コールユーブンゲンは、正しい音程と正しいリズムで歌う。
これが一番重要です。
音程が悪いのは、本当にアウトです。
コールユーブンゲンには音楽性よりも正確さが求められます。
機械的にでいいので、しっかり正しい音程で歌ってください。
正しい音程というのは、先生に聞いてもらったり、自分で録音したものを聞いてピアノで叩き直すなどでずれている部分というのが分かるので調整できます。
では、リズムはどうでしょうか?
コールユーブンゲンで注意してほしいこと【リズム】
リズムは基準となる拍が見えないと、合っているのかずれているのか、判定しにくいです。
特に後半の曲になると、シンコペーション(♪♩♪)の多用や、タイでつながれたややこしいリズムが多くなってきて、こんがらがります。どこに拍頭か、どこに拍子が入るのかしっかり整理しておきましょう。
私は、自分の歌の先生に【拍子が見えるように手で刻むべき】と指導されました。
実際の試験で、わたしは右手で指揮を振りながら歌いました。
絶対に指揮をしながら歌わなくてはいけない!ということではないです。しかし、右手で右のももを軽くたたきながらなど、拍子は取りながら歌うのがベターでしょう。
練習の時から、拍子をとりながら歌うということを癖づけておきましょう!
最低でも、歌い始める前に、どのようなテンポで歌うのか、審査員に分かるように示しましょう。歌うテンポで1~2小節ぶんの拍子を、実際に分かるように叩いてから(あるいは指揮をしてから)入りましょう。
音程は正確に、拍子は審査員に見えるように、だね!
コールユーブンゲンは点数を取りやすい!ということは…
さっきも言いましたが、何度でも言わせてください。
藝大を受験する人たちは、コールユーブンゲンで絶対に点数を落としません。
コールユーブンゲンだけは努力で100点満点が取れるからです。もともと努力の才能のある人ばかりが藝大に集まってきます。コールユーブンゲンはできて当然というスタンスで受験会場にやってきます。
…ということはですよ。
コールユーブンゲンを歌えない人はほとんどいなくて、ほとんど全員が満点を取るんです。
ここで点数を落としたら、アウトくらいの気持ちで、日々、練習に臨んでください。
他の三次試験の科目が不安な方は、絶対にコールユーブンゲンは押さえておいてください。
やればやっただけ、点数が取れますから!
よく聞くのは、全ての曲を暗譜しなさい!です。
最初のメロディが聴こえた時点で、もう全部歌えるくらいにしておきましょう。
まとめ
いかに大切な科目か、ということをゴリ押ししてしまいましたが、これは事実です。
コールユーブンゲンは全部で約230曲ある。
努力で満点が取れる。さらに、歌の基礎が鍛えられる。
よって藝大受験生は、コールユーブンゲンで絶対に点数を落とさない。
藝大受験生はコールユーブンゲンを全曲暗譜して試験に臨む。
藝大の教授陣、全員の認識として、コールユーブンゲンはできて当たり前と思われています。
230曲すべてを練習するには、少し時間がかかるかもしれませんが、丁寧に完成度を高めて試験に臨みましょう(^▽^)/
最初から完璧に歌える人はいませんから、安心して下さい!!
しっかり先生に聞いていただきレッスンしてもらい、自分の課題を克服することが大切です。
人それぞれ、楽器が違いますし、癖というのもあります。
何でも歌えるように、まずはプレーンなところ、自分のゼロ地点を知るのがクラシックです。
個性は、自分のゼロ地点にあります。
個性とは自分で意識して作り出すものではないと思っています。
また、自分の録音したものもよく聞いてみてくださいね!自分の音程のずれに気がつけますし、コールユーブンゲンの上達には、かなり有効ですよ。
毎日の積み重ねが、信じられない力になります(^▽^)/
受験生の皆さん、頑張ってください!!